fukufukurou.cocolog-nifty.com > 街中でフクロウ拾っちゃった・・・


2006年4月のある日の午後、
「あのさ、信じられない話なんだけど、じつは、フクロウ拾っちゃって」

という誠に信じられない電話が私のもとにかかってきた。
電話の主は相方(夫)。

彼の話によると会社の先輩Sさんがお昼休みに昼食をとりに出掛け、会社に戻る途中に通りがかった公園で
バサバサと地面でもがいている鳥を発見。
よくみるとフクロウだったそうです。
その公園は私もよく知っている所ですが
ハシブトカラスの巣窟のような場所であり
のら猫もたくさん住み着いているところです。

Sさんは「このままではこのフクロウは危険なのではないか」と思いしばらく見ていたが
たまらずフクロウに近寄ったそうです。

Sさんが近寄っても相変わらずバサバサしているフクロウ。

そのまま立ち去ることが出来ないSさんは
フクロウを保護。

そして保護してみたもののどうしたものかと思っていると
すぐ近くに小鳥などの小動物を扱っているペットショップがありそこに駆け込みました。

しかし、引き取ってもらえず
会社に連れて帰ってきた といういきさつです。
(ペットショップで箱に入れてもらい)

私は相方(夫)との電話をひとまず切り
お友達である梟屋のhinamiraさんにすぐに電話をしました。
彼女はフクロウの飼育、販売をされている方ですが
野鳥の保護活動をしている方とも親しくされていて
こういう時とても頼もしい存在なのです。
(そしてなにより猛禽類にとても詳しい)

外出先にも関わらず親身に話を聞いてくれる彼女に
状況をお話します。

・街中にフクロウがいる場合誰かが飼っていたフクロウをロストしてしまった可能性もある
・地面に落ちて暴れている時点で羽に問題(打撲・ねんざ・骨折など)も考えられる
・フクロウは子育てをはじめる時期、雛なのか成長なのかで対応が変わる
・どの種類のフクロウか

これから"そのフクロウ"を保護するにあたっていくつか明らかにしなければならないことを伺います。
それにはまず、そのフクロウを自分の目で確かめなくてはいけません。
再び相方(夫)と連絡をとり
会社まで車で引き取りに行くことにしました。

会社の前で待っていると
Sさん、Oさん、相方(夫)が現れて
箱に入ったフクロウを受け取りました。
箱の隙間からそっと覗きます。

黒っぽい茶色の丸い頭、胸の縦じま模様、
アオバズクだとすぐに確認できました。

それもこの時期、東南アジアから渡って来る
" 和もの "のアオバズク。間違いなく野鳥です。
(日本で" 飼育 "されているアオバズク<ニュージーランドアオバズクなど>は" 洋もの "です。 日本の法律で野鳥は飼ってはいけないことになっています)

さて、そんなこんなで我が家に(一時保護とはいえ)アオバズクがやってきました。

狭いダンボールの中でカサカサとしきりに動いています。

当然ですが、このアオバズクは野鳥であるため普段は上空なり木の上なりにいる生き物です。
人間がすぐ目の前にいる現状。

今、確実に解っていることは
「このアオバズクは、とても不安だ」ということ。

アオバズクが入った箱にに大きめの布をかぶせ、なるべく外の音が聞こえないように窓を閉めます。(家は通りに面しているため車やオートバイの音がときどきとても大きく聞こえることがあります)
暗くして静かになった箱の中で少し落ち着いてくれればいいのですが・・・

私は隣の部屋へ行き再びhinamiraさんへ電話をします。

・野鳥であるアオバズクだということ
・雛ではなく成鳥であるということ
・弱ってぐったりしている訳ではないので放鳥したほうがよいか?ということ

以上の事を話します。
そして、
「野鳥であるアオバズクが地面で暴れていて
人間に捕まるということは尋常ではない。よってなんらかのダメージを受けたことは確実であるので、元気そうだからと放してしまってもまたすぐにどこかで弱ってカラスや猫などの天敵に襲われる可能性がある」

とのお話を聞く。
一度電話を切って再び彼女の連絡を待つことに。(その間hinamiraさんは野鳥の保護活動をしている獣医師に連絡を取ってくれる)

私は電話を切った後、そっと隣の部屋のアオバズク入りの箱の様子を伺う。
家へ連れて来てすぐはカサカサとしきりに動いていたが
今は物音ひとつしない。落ち着いてくれたのかなと思いながら
もしや元気がなくなりグッタリしたのかと心配になる・・・

と、そこへ電話が鳴る。hinamiraさんからだ!(箱の中では電話の音に反応したアオバズクがまたカサカサ動く音がする)

hinamiraさんのお友達の獣医師さんとは連絡が取れなかったそうですが
"東京都で保護した野鳥はここへ電話をかけるといいですよ"と
教えてくださりその番号へ電話をすることにします。

すると、そこは環境省でした。
省のNさんという方に再び保護した時の状況を説明します。

すると、やはり何らかのダメージを受けて落ちていたと考えられるので
野鳥を診てくれる獣医さんを紹介するとのこと。

さて、再び電話を待つことなりました。

私は・・・さきほどと同じ行動。隣の部屋のアオバズク入り箱を離れたところから眺める。

するとすぐにNさんから折り返しの電話がかかってきました。
(アオバズクはまた電話の音に反応してカサカサする)

野鳥を診てくれるペットクリニックが見つかったので
連れて行けるようであればNさんからクリニックへ話をつけておいてくれるとのことです。

幸運にもそのクリニックは家から車で15分あれば行ける近さです。

午後の診察は夕方からということで1時間余りをアオバズクは家で過ごさなければなりません。

可哀想だけどもう少し我が家にいてもらうことになります。
私が今、アオバズクに出来ることはなるべく静かにしてあげるということだけです。
(精神的な恐怖から弱ってしまうこともあると言うのを聞いたことがあります)

ところで、私が住む街は荒川が流れていて橋を渡れば埼玉県という場所です。
23区内にあり緑といえばさほど大きくない公園か街路樹か
街中にある神社、学校、お寺くらいのもの。
4線が乗り入れる駅がすぐそばにあり新幹線も走って行きます。
渡り鳥といえば燕がやってきますが
カラスが多くて毎年、雛や卵を奪われる悲惨な現場を目撃します。

なぜ、アオバズクはそんな騒々しい所にある公園にいたのでしょうか。
もしかして渡りの途中(この街を通り過ぎる時)なにかのトラブルに巻き込まれたのでしょうか・・・

・・・・・・

クリニックに行く時間が近付いて来たので
アオバズク入りの箱に近寄ります。

少し落ち着いてくれたのか布をめくって箱を覗いても慌てることはなくなりました。

アオバズク入りの箱を後ろの座席に置いてなるべく揺れないようにします。
そして布をかぶせ出発です。
信号待ちなどで車が停車した時様子を伺ってみますが
特に慌てている様子はありません。
「きっと、自然界に還れるから頑張って!」
そう願いながら車は走ります。

途中、会社の前で車に乗った相方(夫)と共にクリニックへ。

クリニックへはきちんと連絡が入っていて
すぐに診ていただけることになりました。

このクリニックのN先生によると
怪我をした野鳥である猛禽類は時々運ばれてくるというお話でした。
ついこの間もチョウゲンボウが連れてこられて治療後、元気になったので放鳥したそうです。
都会で野鳥が傷つけられて運ばれてくる原因の多くは
高い建物に激突して脳しんとうを起こしたり
カラスや猫に襲われて傷付いたことによるそうです。

N先生は慣れた手付きで箱からアオバズクを取り出し目の様子や
口の中を診察します。

私はこの時点ではじめてアオバズクを明るいところで見ることが出来ました。
正真正銘、立派な大人のアオバズクです。
そして、
「なんて、目に力のある鳥なのでしょう!」
と、すぐに思いました。

N先生、ひととおり診察されて
「まだハッキリしたことは解りませんが特に貧血を起こしているわけでもないし
近い内に放鳥できるでしょう」、とおっしゃいました。
「まずはアオバズクに食べ物を与えて体力が回復したら放します」
、と。

私たちのアオバズクとの関わりはこれでおしまいです。
あとは獣医師さんの判断でしかるべき所に放鳥され
アオバズクは自然に還っていくのです。

それを心から願う!それだけです。

翌日、ペットクリニックに電話をしてアオバズクの様子を聞いてみました。
羽に大きなダメージを受けた様子はないということ。
昨日より落ち着き元気になって、歩きまわったり羽を広げたりしているとのこと。
『そして今日はまだ無理ですがなるべく近い内に放鳥します』と、おっしゃいました。


やっと安心した私はいろいろな事を考えました。
もし、あの公園でアオバズクをSさんが見過ごしていたら
もしかしたらその内に自分の力で飛んで行って余計なストレスを与えないですんだんじゃないかしら。
もし、アオバズクが" つがい "で飛んでいたならパートナーは今頃どうしているのかしら?

もしも・・・もしも・・・・・・と、考え出したらキリがないのです。

しかし、アオバズクが落ちていた時にSさんは見過ごさなかった。
それはSさんから見てその公園がアオバズクにとってとても危険な場所であるということを知っていたから。(そもそも人間の手に野生のフクロウが捕まってしまう時点で尋常ではないのです)
きっと、あの時Sさんがフクロウを保護しなかったら危険な状況が訪れたことでしょう・・・
(実際に公園の地面でバタついている鳥は目立つ光景だったのです)

そして、幸運なことに駆け込んだペットショップで入れられた箱はアオバズクの体の2まわりくらいの大きさであったということ。
(体よりだいぶ大きい箱だと怯えてバサバサと暴れた時に箱で羽を傷つけることがあるそうです)
さらに幸運なことにクリニックが近かったということが重なって今があるのです。
(車での長時間移動は時に多大なストレスを与える場合があります)

・・・・・・

私たちがとった行動は自然界に生きる者を人間のやりかたで" 助けた "ということです。

それが本当によい事なのかは解りません。

数日後、あのアオバズクが再び大空を羽ばたき本来生息するであろう緑の森に還った時、はじめて本当に安堵することができることでしょう。

アオバズクの野生の生きる力を信じて今はそれを願うしかないのです。


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